日本刀の世界には、「折紙付きの刀剣」という表現があります。この「折紙」とは、単に紙に関するものではなく、刀の価値や真贋を証明する重要な鑑定書のことを指します。「折紙」やそれを発行する「本阿弥家(ほんあみけ)」の存在は、日本刀の本質を理解するうえでとても重要な要素です。本コラムでは、折紙の意味や価値について解説します。
そもそも折紙とは、室町時代後期から江戸時代にかけて、刀剣の評価や取引の際にその品質や出自を証明するために発行された文書のことです。現代の「鑑定書」にあたるもので、和紙を折って発行されたことから「折紙」と呼ばれました。これが付いている刀は、歴史的に正式に認められた価値を持つものとされ、特に収集家や博物館にとって重要な意味を持ちます。
発行していた家として最も有名なのが本阿弥家です。代々、刀の研磨や鑑定を専門にしてきた家系で、将軍家御用達として長い歴史を持っています。彼らが出す折紙は極めて信頼性が高く、刀の寸法や刃文、作者の推定、製作年代などが詳細に記載されていました。たとえば、「これは備前長船の某刀工による作で、刃文は丁子乱れ、反りは約1.5寸」といった具合に、鑑定内容が具体的に記されていたのです。
鑑定は、技術だけでなく、何代にもわたる蓄積された知識と経験に裏打ちされており、「折紙付きの刀=信頼できる刀」と認識されていました。このため、折紙の有無はその刀の流通価格にも大きく影響します。現在でも折紙の付いた刀は高く評価されることが多く、愛刀家の間で大きな注目を集めています。
ただし、注意すべき点もあります。歴史が長い分、折紙にも偽物が存在します。江戸時代やその後の時代に、真似して作られた偽物が刀に添えられて出回ることもあったため、現在では日本美術刀剣保存協会など、第三者機関による現代の鑑定制度が併用されています。これにより、折紙と現代の鑑定書を両方確認することで、より正確に刀の価値を把握することが可能になります。
折紙とは、刀剣の価値や真贋を証明するために発行された歴史的な鑑定書のことです。中でも本阿弥家の折紙は信頼性が高く、刀剣鑑定の文化を支えてきました。その有無は評価や市場価格にも影響を与えるため、刀剣を学び始める上でその意味を知っておくことは非常に重要です。